【UMA的酒場探訪】天国は多摩川「たぬきや」にありけり。
僕には趣味が無い。
本をパラパラとめくったり、カメラをいじったりすることはあるが、「趣味は何ですか?」と聞かれれば、明確な答えを言えないのが事実である。
とはいえ。
時間があったらやることが1つだけ。少しのお酒を飲むことである。
わざわざこんな記事を書こうと思ったのは他でもない。僕は天国の扉を叩いたのだ。いや、厳密に言えば、そこに扉は無いのだけれど。
休日の昼下がり、天気予報では最高気温30℃。梅雨の最中でありながら、真夏日である。
酒飲みから「天国は多摩川にあり」といわれる酒場「たぬきや」。
オープンエアー、リバーフロント、横文字を並べてみれば何とも響きが良いが、詰まるところ川っぺりで外飲み出来る店だ。
とりあえず、生ビールを飲む。
2秒後。
もはや景色がツマミになるレベル。
何故こんなにも美味いのか、火照った僕の脳みそでは理解が追いつかない。
目の前には緩やかに流れる多摩川。風に揺れる水辺の雑草。左を見れば鉄橋を京王線が走り、空はただただ広がるばかりである。
解脱。
細かな感情や悩みはすべて抜けるように無くなり、あるのはビールとモツ煮込みと自分だけ。ただそれだけなのだ。
そうそう、60分ほど前に博多ラーメンを食べたので、ツマミはモツ煮込みのみだったのだか、これが味、ボリューム共に素晴らしい。
鬼に金棒、ビールにモツ煮である。
そんなこんなでパラパラと本をめくり、この文章を書き、少しのビールを飲んでいたら、徐々に日が傾いてきた。ほろ酔いの頬に風が気持ち良い。
もう少しだけ季節が過ぎ、真夏の夕暮れを過ごすのもきっと良いだろう。秋が来て、涼しくなったねとおでんを食べるのも良いだろう。冬にキンキンのビールを飲むのは修行に近いのでオススメはしない。
「天国ではみんなが海の話をするんだぜ。」とは僕の好きな映画のセリフだが、今いるのは川である。
しかしながらそこは、ろくでもなく無意味で有意義な天国だった。
渡辺祐磨