浜千鳥が飛び立つ頃に君は。【青森編③】
2018年、8月。
今まで経験したことの無い東京の暑さから逃げ出すように北へ向かった僕は、青森の夏泊(なつどまり)半島にいた。
車は緑の繁る海沿いを走り、窓から爽やかな潮風が撫でるように通り抜けていく。
磯では、何組かの家族連れーとりわけ少年たちーが無心に何かを拾い、また少し走るとテントを張ってキャンプを楽しむ人びと。
それぞれの夏を横目に見ながら、少しずつ近づいていく距離に胸が高まる。
あの海辺で出会った君を、僕は忘れることは無いだろう。
うに丼。
いつまでも、いつまでも食べていたかった、うに丼。
ポケットに入れて持ち帰ろうかと思った、 うに丼。
あゝ、我が親愛なるうに丼よ。
君に向けてただ一つの詩をここに贈ろう。
「忘られむ 時しのべとぞ 浜千鳥 ゆくへも知らぬ 跡をとどむる」
ーよみ人しらず 古今和歌集 巻十八 雑歌・下
(忘れられた時に今を偲べと、どこへ行ったかわからない浜千鳥がその足跡をとどめるように、ここにこうして書き残しておく)
渡辺祐磨
↑ウニ丼はこちらで。ホタテやマグロなど、青森で獲れた海鮮もとても美味しいです。並びに似たような食事処が数軒あり、小さな釣り堀(?)でイカや魚釣りも楽しめます。季節やその日の状況によって、ウニが無い場合もあるそうです。