沖縄、午後6時半。

雲が分ける空の上半分は真っ青なのに、その下側は夕日が海をオレンジ色に染めている。波はほとんど無い。
海からは南国特有の生温いそよ風が吹き、ヤシの葉と少し伸びた前髪を揺らす。

沖縄に来て3日目だが、今日はただ海とホテルを行き来しただけで、昼寝をはさんだ今はのんびりとビールを飲んでいる。

飛行機に乗る間に、もしくは娘が寝ている時に読もうと買った小説は、たった今読みはじめたばかりで、数ページ進む間に夕日が少しずつ姿を隠そうとしているのがわかる。

ところで、毛嫌いしていた泡盛も、友人に勧められた銘柄と飲み方を試したところ、蒸し暑いこの土地ではなぜか美味しく飲める。未だ沖縄そばは食べれてはいないが。

明日は渡嘉敷島に船で渡って、文字どおりの紺碧の海を見に行こう。10年程前に一度だけ行ったのだが、港からバスで向かう途中に山を越えたところで見えた、透き通るエメラルドグリーンと原色のブルーバイオレットが折り重なった様な海がずっと忘れられなかった。

娘が数年後にその景色を憶えているとは思えないが、僕にとっては同じ景色を見られることが何よりも嬉しい。
たった今、夕日が沈んだ。2杯目のオリオンビールも、ちょうど飲み終えたところだ。

渡辺祐磨

-日常